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GOZUを深掘る
「次こそは優勝しますよ」
—また柔道をしたくなる大会、GOZU JUDO
インタビューアー / 文:(株)SOU 仲田匡志

柔道の大会と聞くと、どんな光景を思い浮かべるだろう。張り詰めた試合場。勝ち上がっていく選手。優勝者が決まり、表彰台に上がる姿。出場する以上、選手たちは勝利を目指し畳に上がる。GOZU JUDO TOURNAMENT 主催者の髙橋雄紀さんが見ている柔道の景色は、試合が行われるその日だけではない。仕事をしながら稽古を続ける姿。試合に向けて自分と向き合う葛藤の時間。一度は試合から離れた人が、もう一度出場を決めてエントリーを決めた時。負けた人が「次こそは」と道場へ戻っていく覚悟。GOZU JUDO(以下、GOZU)は、そうした一人ひとりの「柔道との時間」まで含めた大会になりつつある。
「次こそは優勝しますよ」
GOZUは今回、第3回大会を迎える。第1回、第2回を経て、髙橋さんが感じている変化のひとつが、繰り返し参加してくれる柔道を愛する人たちの存在だ。「結構、『次こそは優勝しますよ』って言ってくれるんですよ。挑戦したからこそ、次はこうなりたいというものが出てくる。GOZUを次の目標にして頑張ってくれているんだと思います」

学生時代であれば、大会の日程があり、部活動があり、次の目標が自然とやってくる。けれど社会人になると、柔道との付き合い方は変わっていく。仕事があり、家庭があり、それぞれの日常がある。柔道を続けていたとしても、「次はこの大会を目指そう」という目標がいつもあるとは限らない。GOZU JUDOが目指してきたことのひとつは、そんな人たちにとっての「次の目標」をつくることだった。

「GOZU」という名前には、物事をより良いものに再構築する神様「牛頭」の名前にあやかって名付けられた。柔道が生まれた日本から、柔道界を再構築する一歩につながる願いが込められている。
大会があるから、稽古に行く。負けたから、次はもっと強くなりたいと思う。次のGOZUで会いたい人ができる。大会当日だけではなく、その前後の日常にも柔道が続いていく。髙橋さんは、それを「大きな目的のひとつだった」と話す。
「もう柔道はいいかな」と思っていた人もいた
出場者のなかには、GOZUに出場する前、「もう柔道はいいかな」と感じていた人もいたという。髙橋さんも普段から一緒に練習する柔道家だった。決して柔道をしていなかったわけではない。むしろ、熱心に練習をしていた。それでも、何のために練習するのか。何を目標に続けていくのか。その意味を見つけにくくなっていた。同じようにその意味を探していた出場者がGOZUに参加したあと、髙橋さんに声をかけた。「GOZUが僕を救ってくれました」
大会が用意されているから、また柔道を練習することができた。もう一度、目標を持つことができた。「本当に感謝しています」と言われたとき、髙橋さんは素直に「やってよかった」と思ったという。もちろん、すべての出場者に同じ変化が起きるわけではない。試合に出ることを迷う人もいる。一度出場したものの、次の大会には出ない人もいる。髙橋さん自身、それも柔道の一面だと思っている。
柔道の試合は、やっぱり怖い
GOZU JUDOが「楽しい大会」を目指しているからといって、試合の怖さがなくなるわけではない。髙橋さん自身も現役で柔道を続けている。だから、よくわかる。

「僕もめちゃめちゃ勝ち負けにこだわりますし、負けたら傷つきます。みんな一緒ですよね。」
試合では、自分の弱いところが出る。練習してきたことができないこともある。相手に投げられれば、その結果は誰の目にも明らかだ。髙橋さんは、その感覚を「素っ裸になるみたい」と表現する。だからこそ、エントリーを迷う人がいるのも当然だという。「もう次は傷つきたくない」と、試合から距離を置く人もいる。GOZUは、そんな勝敗の怖さをなくすような遊びの大会ではない。むしろ、勝ちたいと思う気持ちも、負けて悔しいと思う気持ちも、そのまま大切にしたいと考えている。ただ、それだけで終わらせたくない気持ちが会を重ねるごとに強くなったそうだ。
勝敗だけを見たら、普通の大会になる
「大会って、勝つか負けるかになるじゃないですか。でも、それだけだったら普通の大会なので」
髙橋さんがGOZUで届けたいのは、結果だけではない。その人が、どんな思いで柔道を続けてきたのか。なぜ、もう一度試合に出ようと思ったのか。大会まで、どんな時間を過ごしてきたのか。「どう生きてきたのかとか、試合までにどんなプロセスがあったのか。勝ち負けも含めて、その人の生き様みたいなものを届けられたらいいなと思っています」
試合結果だけなら、「勝者」と「敗者」に分かれる。けれど、その日までの時間に目を向けると、一人ひとりにまったく違う柔道がある。仕事を終えてから道場へ向かった人。何年ぶりかに試合への出場を決めた人。前回負けた悔しさを持って、もう一度戻ってきた人。柔道をやめようと思いながら、それでも続けてきた人。GOZU JUDOが大切にしようとしているのは、その部分だ。

公式のInstagramでは、大会出場者の声が並ぶ。柔道ができる場所への想いが感じられる。
「柔道を続けたい人」が、続けられる場所に
GOZU JUDOには、もうひとつ既存の大会とは異なる特徴がある。賞金がある「PRO CLASS」だ。その背景にあるのは、柔道を続けたい選手が、競技を続けられる環境そのものをつくりたいという考えから。柔道が好きで、もっと強くなりたい。まだ現役を続けたい。そう思っていても、社会人になれば仕事や生活との両立があり、気持ちだけでは競技を続けることが難しくなる人もいる。だからGOZUは、挑戦できる場所を用意するだけでなく、柔道を続けることが経済的にも報われる仕組みをつくろうとしている。その一歩目とメッセージが、賞金に込められている。「柔道を続けたい」と思う人が、競技を諦めなくてもいい環境をつくる。それもまた、GOZUが描いている未来のひとつだ。
髙橋さんがモンゴルで経験した「一番楽しかった柔道」
髙橋さんには、今も記憶に残っている柔道がある。モンゴルを訪れたときのことだ。一つの試合場をみんなで囲み、6人ほどで次々と柔道をする。負ければ一度外に出る。次の人が入る。でも、しばらくすればまた自分の順番が回ってくる。
「思いっきりぶっ飛ばされて負けても、『ウェーイ』みたいな(笑)。また順番が回ってきて、もう一回できる。あのときが一番楽しかったんですよ」勝ち負けはある。みんな本気で柔道をする。でも、一度負けたからといって、すべてが終わるわけではない。また挑戦すればいい。「半分遊びみたいなところもあったんですけど、あのときは本当に純粋に柔道ができたなと思って」この感覚は、GOZU JUDOが目指す大会のあり方にもつながっている。真剣勝負はする。勝ちにもいく。負ければ悔しい。でも、その負けが「自分はダメだった」で終わる必要はない。「今日は負けた。でも、またやろう」そんなふうに柔道を続けられる場所にしたい。
主催者の「わがまま」から、少しずつ仲間が増えてきた
髙橋さんは、GOZU JUDOの始まりを「僕のわがままからスタートした」と話す。けれど第3回を迎える今、その「わがまま」は髙橋さん一人のものではなくなりつつある。アンバサダーとして協力してほしいと声をかけた人たちは、「もちろんです」「光栄です」と応えてくれた。過去の出場者からも、自分たちにできることがあれば協力したいという声が生まれている。GOZUでの経験をきっかけのひとつとして、試合だけでなく、その前の練習にも目を向けた練習会を開く人も現れた。髙橋さん自身も、「僕、そんなに友達多くないんですけど、GOZUを機に増えたなと思って」と笑う。


実行委員会メンバー意外にも有志で集まっていただいた運営メンバーや会場でのドリンク/物販など一味違う大会へ貢献いただく方が増えている。
また、出場者の地域も広がっている。当初は大阪をはじめとした関西圏が中心だったが、九州から参加する人が現れ、遠くはアメリカから出場した柔道家もいた。第3回では、さらに海外の柔道家ともつながっていきたいと髙橋さんは考えている。大会を大きくすることだけが目的ではない。GOZUという場を通じて、柔道を続ける人同士のつながりが生まれていく。そのことに、髙橋さんは可能性を感じている。
第3回をやるのは、まだ途中だから
大会を続けるのは大変ではないですか。そう尋ねると、髙橋さんは少し笑いながら「大変です」と答えた。

それでも、第3回を開催する。なぜなのか。
「第3回、第4回、第5回と続けて、みんなに安心して出てもらえるところまで持っていきたいんです」
髙橋さんが見ているのは、一度の大会の成功ではない。柔道で傷ついた経験のある人。試合から離れてしまった人。それでも、柔道が忘れられず好きな人。そんな人たちが、もう一度安心して挑戦できる場所になるまで、GOZUを育てていくことだ。GOZU JUDOは、勝敗のない大会ではない。勝ちたい人が、本気で勝ちにいく大会だ。ただ、その勝ち負けだけで柔道を終わらせない。負けたら、また練習する。次の大会を目指す。そこで出会った人と、また柔道をする。そうして柔道が、その人の人生のなかでもう少し続いていく。GOZU JUDOは、そのための「次の場所」をつくろうとしている。
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GOZU JUDO TOURNAMENT 其の参
日時:2026年12月12日(土)
会場:大浜だいしんアリーナ(大浜体育館)
髙橋 雄紀 / YUKI TAKAHASHI
GOZU JUDO主催、TAKAHASHI JUDO ACADEMY代表。山梨学院大学柔道部出身。講道館柔道四段、公認柔道指導者資格を有し、海外での指導経験も持つ。現在は大阪府堺市を拠点に、子どもたちの心の成長を大切にした柔道指導に取り組む一方、自身も現役柔道家として競技を続けている。「柔道を続けたい人が挑戦し、輝ける舞台をつくりたい」という想いからGOZU JUDOを立ち上げる。年齢や環境に左右されず柔道に情熱を注ぐ人たちに、新たな挑戦の場と柔道の可能性を届けている。
